先日体験した、”こころがほっこりするエピソード”です。
いつもは子どものお迎え時間に追われ、足早に通り過ぎるホームですが、先日は仕事が早く終わり、少し余裕がありました。
帰宅時間にはちょっと早め。でも、相変わらず電車は満員でした。
電車が駅に到着し、たくさんの人がはき出されます。 私もその人の流れに乗り、階段の方へ歩きました。
その時、白い杖を持つ50代ぐらいの男性が目に入りました。
その男性は、電車から降りた人の波が通り過ぎるのを待っていたようです。白い杖を近くに引き寄せ、黄色い点字ブロックの上に立っていました。
私は足早に歩く人の波から離れ、その男性に声をかけました。
「どこまで行かれますか?案内しましょうか?」。突然向けられた私の声に、確認するように少し間を置いた後、返事がありました。「あ、ありがとうございます。では階段まで」。
私は、そっと差し出す男性の手に、自分の曲げた右腕を近づけました。
「どうぞ」。男性は、「よろしくお願いします」と頭をさげながら、そっと腕を持ちました。そして、少なくなった人の流れに乗り、歩きはじめました。
歩きながら、「実は、私の父も目が悪かったんですよ」と話しました。
父は私が子どもの頃に弱視となったため、私は何度も父の案内係をしたことがあります。そのため、目が悪い方を見ると父を思い出し、声をかけたくなるのです。
男性は、「そうですか、どうりで慣れていらっしゃると思った」と答えました。男性は、仕事で電車に乗るそうで、「働かなきゃいけませんからねぇ」と笑いながら話しました。
あっという間に階段下に着きました。
私は「階段ですよ」と、右腕に添えられていた男性の手首を、そっと階段の手すりに移動させました。そして、「では、お気をつけて」と去ろうと思った時です。
「ちょっと待ってください!」と呼び止められました。
男性は、胸元のポケットから名刺入れを取り出しました。
「名刺をもらうのかな?」と思った私に、差し出されたカードがこちらです。
なんと、「Thank you」カードです。
「すごい!こんなの用意されてるんですね!」と言うと、「渡せる機会もあるかと思って」とのことでした。
「ありがとうざいます。それではまた。」とお別れを言い、先に階段をのぼりました。
その後、家に帰るまで、何度かカードを眺めました。
優しいカードの言葉に、何度も”ほっこり”しました。
「助け」や「親切」は出すタイミングが難しく、失敗すると「おせっかい」になってしまいます。そのため、ついつい「それなら関わらないでおこう」と思いがちです。
でも、このように「すっと受け入れられ、御礼のカードが渡される」なら、助けの輪が広がりそうだと思いました。とても素敵なことです。
私も重い荷物を運んでいる時、赤ちゃんを連れている時など、助けが欲しい時がありました。でも、なかなか「助け」や「親切」をもらえることはなく、とても孤独な気持ちになりました。
サッと「助け」や「親切」を提供し、スッとそれを受け入れ、感謝をうまく伝える人間になりたいと思いました。
白い杖の男性、ありがとう!